暮らしのTIPS子育て世帯に朗報!「こども未来戦略」で、
子どもの数に応じた住宅ローンの金利優遇制度がスタート!
March 26, 2024

2023年12月、政府は次元の異なる少子化対策の実現を目指して、「こども未来戦略※1」を閣議決定。その施策の一つとして「子育て世帯に対する住宅支援の強化 ~子育てにやさしい住まいの拡充~」が盛り込まれました。

立地や間取りなどの面で子育て環境に優れた公的賃貸住宅に、子育て世帯等が優先的に入居できる仕組みの導入を働きかけたり、空き家の活用によって、ひとり親世帯などが住宅に入居しやすい環境を整備したり、といった対策が提示されています。

今回は、具体策の一つとして2月にスタートした、住宅金融支援機構が提供する全期間固定金利の住宅ローン「フラット35」について、こどもの人数に応じて金利を引き下げるという、画期的な制度「子育てプラス」について、こども未来戦略の背景とともにお話しいたします。

※1:「こども未来戦略」

今なぜ、子育て支援?

厚生労働省の発表によれば2023年の出生数(速報値)は、前年比51%減の75万8631人。8年連続で減少し、統計を開始した1899年以来最少の値となっています。1949年に生まれたこどもの数が約270万人だったことを考えると、こどもの数はピークの3分の1以下にまで減少していることになります。

少子化は、人口減少を加速化させており、2023年は83万1872人の自然減とこちらも過去最大の減少幅です。今後も、100万人の大都市が毎年1つ消滅するようなスピードで人口減少が進む想定です。2024年1月1日時点での日本の総人口は1億2409万人ですが、このままでは、2050年代に1億人、2060年代に千万人を割り込み、2070年に 8,700万人程度となって、約50年で人口の3分の1を失うおそれがあるのです。

このような急速な少子化・人口減少が続くと、経済や社会のシステムを維持することは難しく、たとえ労働生産性が上昇しても、国全体の経済規模の拡大は難しくなり、我々国民の最低限の暮らしすら維持できなくなる可能性があるのです。

経済発展が続くインド、インドネシアなどの国々に追い越され、差が拡大し続けると、国際社会における存在感を失い、何よりも我々国民の豊かな暮らし、最低限の暮らしが維持できなくなる可能性すらあるのです。

危機感を強めた政府は、次元の異なる少子化対策の実現を目指して、「こども未来戦略」を決定しました。2023年12月に閣議決定された内容には、以下の3つの基本理念が掲げられています。

  • (1)若い世代の所得を増やす
  • (2)社会全体の構造・意識を変える
  • (3)全てのこども・子育て世帯を切れ目なく支援する

少子化に歯止めをかけるには、2030年代に入るまでのこれからの6~7年がラストチャンス、と「こども未来戦略」には、下記のような施策が盛り込まれています(「こども未来戦略」より一部抜粋)。

  • 「児童手当」所得制限の撤廃、支給期間を高校生まで延長
  • 「出産・子育て応援交付金(10万円)」2024年度継続実施
  • 「高等教育費の負担軽減」奨学金制度の充実、「授業料後払い制度」の創設

子育て支援については、地方自治体が独自で行っている場合があります。お住まいの自治体や引越し先のホームページ等にて確認してみましょう。

2024年2月13日、子育て世帯を応援する【フラット35】子育てプラスがスタートしました!

「子育てプラス」は、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して提供している住宅ローン「フラット35」の金利引下げメニューです。民間金融機関の住宅ローンは対象ではないため、ご注意ください。「子育てプラス」では、子どもの人数に応じて一定期間の金利が引き下げられることが特徴です。子どものいない若年夫婦世帯も金利引下げの対象です。以下、具体的に見ていきましょう。

■資金使途
新規に住宅を購入する際の「フラット35」の金利が引下げ対象
「子育てプラス」は、新築一戸建て、新築マンション、中古住宅、中古住宅+リノベーションを購入する際に利用する「フラット35」の金利が引下げの対象です。

購入する住宅は、申込者本人が自ら居住する住宅のほか、セカンドハウスとして居住する住宅、親族(※1)が居住する住宅の購入も対象です。新規の住宅購入が対象ゆえ、住宅ローンの借換えは対象となりません。 (※1)親族が居住する場合は、融資対象住宅に入居する人が子どもを有する場合または若年夫婦に該当し、かつ、連帯債務者となる場合のみ利用可。

■対象世帯
「子育て世帯」と「若年夫婦世帯」の要件とは
「子育てプラス」の対象となる子どもには、年齢要件があります。借入申込時に子ども(実子、養子、継子および孫をいい、胎児を含む。ただし、孫の場合は申込者との同居が必要。別居している子どもの場合は、申込者が親権を有していることが必要。)が有り、その子どもの年齢が借入申込年度の4月1日において、18歳未満である世帯が対象です。なお、資金実行時(金融機関が資金実行日、融資金利などを登録する手続日)までに前述の要件を満たした場合も利用が可能です。

「子育てプラス」は、子どもがいない若年夫婦世帯も対象です。その要件は、借入申込時に夫婦(法律婚、同性パートナーおよび事実婚の関係。婚約状態は対象外。)であり、夫婦のいずれかが借入申込年度の4月1日において、40歳未満(以下「若年夫婦」)である世帯です。なお、資金実行時(金融機関が資金実行日、融資金利などを登録する手続日)までに当該要件を満たした場合も利用が可能です。

年齢確認は、借入申込年度の4月1日時点。そして、要件は資金実行時までに満たせばよいため、例えば、35歳独身の申込人が、融資実行時までに婚姻するケースは利用可ですし、借入申込時は子どもが1人で、資金実行時までに2人目を妊娠した場合は、子どもは2人としてカウントされます。

なお、「子育てプラス」は、子育て世帯と若年夫婦世帯が対象ですが、「フラット35」の申込は夫婦2人(連帯債務)で行う必要はありません。単独名義での申込が可能です。「子育てプラス」は、2024年2月13日以降の資金実行分から取扱いが始まっています。

金利引下げ幅は、ポイントで計算

■「1ポイント=▲0.25%」引下げ幅は年最大▲1.0%
「子育てプラス」の金利引き下げは、ポイントでカウントされます。子ども1人に1ポイント。2人なら2ポイント、3人なら3ポイントです。1ポイントは「▲0.25%・5年間」となっていて、年間の最大引き下げ幅は▲1.0%です。子ども2人なら2ポイントとなり、当初5年間の金利が▲0.5%(▲0.25×2p)引下げとなります(表1)。

金利引下げのパターン 金利引下げ期間 金利引下げ幅
若年夫婦世帯またはこども1人の場合
※1Point
当初5年間 年▲0.25%
こども2人の場合
※1Point
当初5年間 年▲0.5%
こども3人の場合
※1Point
当初5年間 年▲0.75%

※表1

「子育てプラス」では、年間の金利引下げ幅が最大▲1.0%と上限が設けられています。例えば、子どもが5人の場合、▲0.25×5=▲1.25%となり、年間の最大幅▲1.0%を超えてしまいます。この場合、当初5年間は▲1.0%、そして、6年目から10年目の金利が▲0.25%となる仕組みです。「子育てプラス」は、「フラット35」Sや「フラット35」地域連携型など、他の金利引下げメニューとの併用が可能ゆえ、合計が4ポイントを超えると、引下げ期間が長くなるのです。(図2、図3参照)

図2 新築一戸建て住宅の住宅性能によるポイント組み合わせ例(こどもが1人の場合)

図3 新築マンションの住宅性能とのポイント組み合わせ例(こどもが1人の場合)

住宅ローンの利用にあたって検討したいこと

■家計に優しい購入予算と返済計画を
高額の住宅を購入するにあたり、住宅ローンは心強い味方です。一方、借入れには完済義務が伴います。返済は20年、30年と続き、近頃では40年や50年といった住宅ローンも登場しています。長期にわたる返済の間には、結婚、出産、子育て、転職、リタイアなど、様々なライフイベントが起り得ます。無理のない購入予算と返済計画が大切です。

毎月の家計収支から無理なく返済できる借入額を試算し、予算計画を進めていきましょう。

■家計に最適な資金&返済計画を
「子育てプラス」の対象となる「フラット35」は長期固定金利タイプの住宅ローンです。3月度の金利は、年1.840%~年3.450%(借入期間:21年以上35年以下、融資率:9割以下の場合)です。「子育てプラス」の金利引下げが3ポイントあると、当初5年間は1.84%-0.75%=1.09%です。

物価上昇に加え、日銀の金融政策の見直しにより、固定型も変動型も金利の上昇トレンドが見込まれます。「子育てプラス」により引き下げられた金利で固定されるのは、金利上昇リスクのヘッジには都合が良さそうです。

「フラット35」には、様々な金利引下げメニューがあり、ホームページでは、金利引下げ内容確認シミュレーションページが用意されています。家計にやさしい資金計画は試算が重要です。民間金融機関の住宅ローンも含めて比較検討し、家計に最適な資金&返済計画をプランニングしていきましょう。

子育てプラスの詳細および借入れシミュレーションは下記【フラット35】公式サイトにてご確認ください。
https://www.flat35.com/loan/flat35kosodate-plus/index.html

※掲載の情報は、2024年3月時点の情報です。

大石 泉Izumi Ohishi
ファイナンシャルプランナー CFPⓇ。1級FP技能士。宅地建物取引士。産業カウンセラー。大学卒業後、株式会社リクルートへ入社。住宅雑誌の編集・制作に約15年勤務の後、’01年にFP事務所を設立。老若男女を対象に新聞による経済教育、ライフプラン、資産形成などの講座や研修を大学や企業へ展開。個人向けにはファイナンシャル・プランニング、ライフ&キャリアプランニングを提供。金融リテラシーの普及活動が評価され、金融庁と日本銀行から2014年度金融知識普及功績者として表彰される。