暮らしのTIPS
北向きの部屋を暖かく心地よく ~冬の寒さと結露を防ぐ住まいと暮らしの整え方~
冬になると北向きの部屋が寒い、暖房費がかさむ、結露が発生しやすいなどの悩みの声を聞くことがあります。今回は、北向きの部屋を暖かく心地よく過ごすための住まいと暮らしの整え方と、ぬくもりを感じさせるインテリアの工夫をご紹介します。
Yuu(尾間紫)
一級建築士事務所 OfficeYuu代表。
一級建築士、 インテリアコーディネーターとして数多くの現場経験や相談実績をもち、住宅リフォームコンサルタントとして快適な住まいづくりのノウハウを発信している。
一級建築士、 インテリアコーディネーターとして数多くの現場経験や相談実績をもち、住宅リフォームコンサルタントとして快適な住まいづくりのノウハウを発信している。
足元が冷える、でも暖房しすぎると乾燥が気になる

北向きの窓から冷気が流れ込み、布団の中にいても顔だけが冷えてしまうという悩みも。
「冬になると寒さを厳しく感じる」「暖房をつけると顔が火照って足元が冷える」「暖房のし過ぎで乾燥が気になる」「窓の結露がひどくカビが生える」。北向きの部屋では、こういった悩みの声をよく聞きます。
特に、窓のそばで寒さを感じやすく、窓際にあるベッドでは、布団に入っていても流れてくる冷気で顔が冷たくなってしまうことも。
だからといってエアコンをつけ過ぎると、今度は乾燥が心配です。また、エアコンは夏の冷房よりも冬の暖房にかかるエネルギーの方が大きく、長時間の使用は光熱費の負担も大きくなります。
北向きの部屋は、結露が発生しやすいのも悩みのひとつです。日射が当たりにくく、北風が当たる窓は冷えやすく、そこに室内の暖かい空気が触れると結露が発生します。中には毎朝の結露の拭きとりが日課になっているご家庭も。
近年、高性能なマンションでは「北向きでも意外と寒くない」と感じられる住まいも増えていますが、築年数が経った家や、暮らし方によっては、冬の冷えや結露に悩まされるケースが少なくありません。
こうした悩みは、住まいや暮らしの小さな工夫で改善することができます。まずは、北向きの部屋で寒さを防ぐのに効果が大きい「窓まわりの整え方」からご紹介しましょう。
北向きの部屋の寒さを防ぐ、窓まわりの整え方

冷たい窓に暖かい空気が触れると急速に冷やされ、その冷気は対流で下方へと流れます。これを「コールドドラフト現象」といいます(資料提供:LIXIL)
家の中の寒さの原因のひとつとなっているのが「窓」です。窓は熱の出入りが大きく、せっかく暖房した熱も、その多くが窓から流れ出しています。
北向きの部屋で足元の冷えを感じるのも、窓が原因の可能性があります。外の寒さで冷え切った窓ガラスに室内の暖かい空気が触れると、急速に冷やされ、その冷たい空気は対流で足元へと流れていきます。
これを「コールドドラフト現象」と呼び、暖房していて顔まわりは暖かいのに足元が冷える、窓もドアも締め切っているのに冷気の流れを感じる…… そんな時は、この現象が起きている可能性があります。
北向きの部屋を冬に暖かく保つためには、窓まわりの対策が必要です。窓からの熱の流出を防ぎ、冷気の流れを発生させないよう、まずは窓まわりを整えることから始めましょう。

窓の断熱性能を高め寒さを防ぐハニカムスクリーン。生地断面が蜂の巣(ハニカム)構造になっていて、この空気の層が高い断熱効果を発揮します。
窓から室内の暖かい空気を逃がさないよう、カーテンは厚手でしっかりとした織りのものを選びましょう。掛け方にもひと工夫を。窓全体を覆うように掛け、サイドは折り返して壁にぴったりと寄せるなど、熱の出入りを防ぐようにスキマを無くすことがポイントです。
おすすめは、断熱性能の高い「ハニカムスクリーン」を取り付けること。内部に空気層を持つハニカムスクリーンは、断熱効果が高く、窓からの冷気をしっかりと遮ってくれます。
内窓の取り付けは寒さ対策に大きな効果を発揮するリフォームのひとつ。1か所、最短1時間程度で取り付けができ、室内が格段に快適になります(インプラス/LIXIL)さらに効果を高めたい場合は、「内窓」の設置を検討するといいでしょう。内窓とは、今ある窓の内側にもうひとつ樹脂製の窓を取り付けるもの。二重窓構造になるので、冬は暖かく夏は涼しく、防音効果もあり、室内環境が大きく向上します。
実際に北向きのタワーマンションで、寝室の冷気に悩んでいたケースでは、内窓とハニカムスクリーンを併用したところ、ほぼ冷気を感じることがなくなりました。
北向きの部屋を冬に暖かくする第一歩は、窓まわりを整えることから。小さな工夫で、冬の季節も暖かく快適に過ごせるようになります。
結露を防ぐ小さな暮らしの工夫

結露は放置するとカビの原因になることも。冷えた窓に室内の暖かい空気が触れると結露が発生します。
北向きのマンションで聞くことが多いのが、窓まわりの結露の悩みです。冬になると、窓のガラス面や枠に水滴がつき、周囲にカビが生えてしまっているケースもあります。
結露は、冷えた窓に室内の暖かく湿った空気が触れることで発生します。ガラスのコップに冷たい飲み物を注ぐと、外側に水滴が付くのと同じ原理です。
つまり、結露を防ぐには、窓を冷やさないこと、そして冷えた面に暖かく湿った空気が触れないようにすることがポイントに。
効果が大きいのは、先ほどご紹介した「内窓」の取り付けです。マンションでも取り入れやすく、暖かさを保ちやすくなるのに加えて、結露防止にも大きな効果があります。断熱性能の高い窓に交換(※)するのもいいでしょう。窓自体が冷えにくくなり結露を軽減できます。
(※マンションの場合は、窓の交換が可能かどうか管理組合に事前に確認してください)
暮らしの工夫でも結露は軽減できます。室温と湿度がともに高い状態が続くと結露が発生しやすくなります。料理中は換気扇をしっかり回して蒸気を外に逃がす、洗濯物の室内干しは避ける、お風呂やトイレのフタはこまめに閉める、加湿器や暖房を使い過ぎないようにするなど、温度と湿度を適切にコントロールしましょう。
特に朝の寝室は、呼気で湿度が高くなり、結露が発生しやすい状態になっていますので、朝起きたら10分ほど窓を開けて換気をするのがおすすめ。各部屋に温湿度計を置き、室温や湿度を見える化しておくと、換気や加湿のタイミングを判断しやすくなります。
北向きの部屋で暖かく過ごす北欧インテリア

ロロスツイードは、ノルウェーを代表するブランケットのメーカーです。高品質のピュアニューウールで織られたブランケットは自然な風合いと温かさが特徴で、冬のインテリアアイテムにぴったりです。こちらはオーガニックの無染色糸を使用(フレッテ/アクセルジャパン)
北向きの部屋で寒い冬を快適に過ごすために、インテリアにもひと工夫をしましょう。ぬくもりあるデザインや、柔らかくふわふわとした肌触りは、ほっとするような心地よさを感じさせてくれます。
お手本は、寒い冬が長く続く北欧のインテリアです。例えば、いつものソファにふんわりとした大判のブランケットを掛け、柔らかい肌触りのクッションカバーに交換するのはいかがでしょう。
北欧の暮らしでは、ブランケットにくるまって冬の夜を過ごしたり、壁に掛けてタペストリーにしたり。上質なウール製品が揃った北欧のブランケットは、デザイン性にも優れているので、インテリアのアクセントにもなります。

本物の火を再現する特許技術で揺らぐLEDキャンドル。安全性が高いので安心して使えます(LEDキャンドル/ルミナラ)
北欧では長い夜をキャンドルのあたたかい光の中で過ごすこともあります。本物の炎のような揺らぎを感じさせてくれるLEDキャンドルなら、どこでも安全に癒しの時間を楽しめることでしょう。

LEDキャンドルには、白樺をあしらったデザインのタイプやティーライトやテーパーなどいろいろな種類があります(LEDキャンドル/ルミナラ)
北向きの部屋の寒さや結露に悩んでいるなら、住まいや暮らし方を少し見直してみましょう。中でも「ハニカムスクリーン」や「内窓」の取り付けは手軽で効果が大きく、マンションでも取り入れやすいアイテムのひとつ。小さな工夫で、寒い冬を暖かく心地よくお過ごしください。
※コラムの内容や掲載商品は執筆時(2025年9月)の情報であり、予告なく変更される場合がございます。最新情報をご確認下さい。