自然と、自分に向き合う穏やかな旅。オフシーズンの宮古島を楽しむ

宮古島といえば、まず思い浮かぶのはエメラルドグリーンの海。透き通った水面と白い砂浜が広がり、眩しい太陽の下でマリンスポーツを楽しむシーンを想像する方も多いのではないでしょうか。そんな中、本コラムではオフシーズンに着目。原生林と天然ビーチに囲まれた隠れ家的な立地にある「the rescape(以下、ザ・リスケープ)」を訪れ、秋冬ならではの過ごし方や、ハイシーズンとは一味違った宮古島の魅力について、総支配人の後藤淳さんと、広報担当の稲里なおみさんにお話を伺いました。

後藤淳
The rescape 支配人 兼 運営統括 GM
兵庫県出身。外資系ホテル、アパレル外資ブランドメーカー勤務を経て、2022 年入社。同年より現職。

稲里なおみ
鹿児島県出身。WEBマーケティング会社を経て2020年入社。同年より現職。
島の恵みを堪能し、静けさに身を委ねる秋、そして冬

「宮古島というと夏のイメージが強いかもしれません。でも秋冬にも負けず劣らずの魅力があります。例えばこの時期のほうが、野菜や果物など食材は豊富です。見たことも聞いたこともない食材、宮古島にしかない食材を存分に味わうなら、秋冬がおすすめです。本土とはまた異なる色、香り、歯触り、甘みや苦み、食感に出会えるのではないでしょうか」と述べられた後藤さん。

大福牛は、まろやかな風味と、濃いうま味が特徴
実際にレストランのメニューを開いてみると、初めて目にするお品書きや、「島おでん」という興味をそそられるものなども。しゃぶしゃぶやBBQ、コースディナーの肉料理は「大福牛」という宮古のブランド牛が使われていたり、沖縄でしか手に入りにくい島胡椒として古くから親しまれているピパーチ、時計草などを多用していたりと、島ならではの味わいが広がります。
稲里さんは、ホテルライフをより満喫できるのはオフシーズンではないかと話されました。
「宮古島の東海岸は、沖縄県内でも希少性の高い天然ビーチと原生林に囲まれた手つかずの自然が残っています。ザ・リスケープはまさに隠れ家といった立地にあるのですが、秋冬はさらに隠れ家感が増します。耳をすませば、そよぐ木々の葉音、鳥のさえずり、寄せては返す波の音など、自然の音楽が聞こえてきます。ふだん忙しくされている方にとっては、穏やかに流れる時間に身をまかせることは何よりの贅沢な体験ですよね。心身ともにリフレッシュしてお帰りになられる方が多いです」

ホテル隣接の防風林を抜けると目の前に広がる宮古ブルーの天然ビーチ
部屋の価格がハイシーズンに比べてかなりリーズナブルなため、3~5泊と長めに滞在しやすいことも、オフシーズンの大きな魅力です。

テラスのプライベートプール、浴室内のバスタブとあわせ、自然の中で楽しめるアウトバスも
ゆったり流れる島時間。宮古島らしいアクティビティが充実
特に宮古島らしい体験になるのは、敷地内に自生するクバの葉を使ったクラフト作り。レセプション棟1階にクバを用意してあるので、お部屋やラウンジでいつでも自由にお楽しみいただけます。 ぜひお魚のクラフトを作ってみましょう。
ご宿泊者さま限定の無料アクティビティ。できあがった作品は旅の記念にお持ち帰りを
また2025年の春からは、ホテルや島のあちこちで摘んだ草花でドライフラワーを作る体験が仲間入り。南国・宮古島ならではの色あざやかなドライフラワーボックスは、素敵な旅の思い出になりそうです。
1日1組限定のアクティビティ。料金は3,000円から
秋冬に特に人気なアクティビティは、マシュマロナイトだそう。夕暮れ時にファイヤープレイスを囲んで、焚き火でマシュマロを焼くというピースフルな体験です。
「宮古島産のさとうきびでつくったスティックにマシュマロを刺して、焚火の上で少し焦げ目をつけるんです。フワフワトロトロの食感で美味しいですし、スティックはそのままかじることもできます。星空の下で焚き火を見るだけでも癒されますよね」
実際に焚き火の揺れる炎や燃える音には、自然界に存在するリズムが含まれていて、リラックス効果があると言われています。非日常的なひとときを過ごすことができると好評です。
子どもはもちろん、大人も童心に帰ってしまうマシュマロナイト
レセプション棟にある、オリジナルバスソルトをつくれるコーナーも、とっても素敵。
「岩塩、ハーブ、アロマオイルを選んで、体調や気分に合わせたお好きな香りをつくることができます。のんびり浸かるお風呂は、客室での過ごし方の中でも一番のおすすめなので」
入浴剤をアメニティとして備えておくのは簡単なことですが、あえてご自身で選んでつくるという行為そのものを体験として味わっていただきたいという想いでできたこのコーナー。実際にハーブやアロマの香りを確かめていると、五感がふんわり開いていくように感じました。
2種類の岩塩、6種類のハーブ、6種類のアロマオイルをご用意
散策しやすい気候だから、あちこちと巡ってみたい
秋冬シーズンの観光についてはいかがでしょうか。後藤さんはまず「宮古島海中公園」を挙げられました。
「宮古島の海の中が覗けるローカル色の強い水族館です。シュノーケリングやダイビングをしなくても、水深約3~5mの海中の世界を見られるんですね。色とりどりの熱帯魚はもちろん、ウミガメやサメなどに出会えることもあります。施設内には魚博士のような存在のお兄さんがいて、いろいろ説明してくれるので、地元の人とちょっとコミュニケーションを取れるのもいいですよね。プランクトンの関係で、実は冬場のほうが海の透明度は高いと言われています」
24個のアクリルパネルの窓から、宮古島の神秘に満ちた海中世界に触れる
「宮古島市熱帯植物園もおすすめです。デイゴやガジュマル・トックリキワタなど沖縄らしい植物をはじめ、約1,600種以上の植物があって、秋冬は特にブーゲンビリアが美しい時期です。体験工芸村が併設されているので、伝統工芸や郷土料理に触れることもできます」
1年中カラフルな花が咲き乱れる宮古島市熱帯植物園
また、ご自身の実体験から、イチオシは史跡巡りだそう。
「両親を呼んで史跡巡りをしたんです。宮古島にはインターネットにもガイドブックにも載っていない史跡が、実はたくさんあるんですね。実際に見てみると『おおー!』と思わず声を上げてしまうような感動的な景観に出会えることがあります。情報が十分にない史跡については、自然がつくったものなのか、はたまた人間がつくったものなのかさえわからないこともあるのですが、そんなところもワクワクしますし、自分が訪ねた史跡マップをまとめたいと思っています。両親もとても喜んでくれました」
隠れた絶景ポイントとしても知られるヌドクビアブ
お話ししながら、後藤さんが見せてくれたのは「ヌドクビアブ」の写真。伊良部島の道なき道を進んでいき、細く急な階段を降りて行くとたどりつく地下洞窟です。ゴツゴツの岩肌は、頭上から垂れるガジュマルの根に覆われ、物語の中に入り込んだかのよう。宮古島にはこうした洞窟が点在しています。
「特別に歴史好きというわけではない自分ですらロマンを感じるので、ぜひ、そんな切り口からも宮古島を味わってほしいですね。わたしは郷土史研究会にも入っていて、日々、地元の歴史、自然、文化、料理などを勉強させてもらっています。何かホテルにも取り入れられたり、お客さまにご紹介できたらいいなと思って」
この日、取材班が訪れたのは、沖縄県指定の天然記念物である宮古馬に会える「宮古馬放牧場」や、宮古島の天然の塩をテーマにした「雪塩ミュージアム」など。ほかにも足を運びたいスポットは迷うほどにあり、秋冬の宮古島も十分に楽しいロケーションであることを実感しました。
見学や餌やり体験をとおして、宮古馬への理解を深められる宮古馬放牧場
雪塩の製塩方法や雪塩ならではの使い方を楽しく学べる雪塩ミュージアム
地元のみなさまと、島を守る、盛り上げる
この素晴らしい環境を守るために、どんなことをされているのでしょうか。宮古島では、島全体でエコアイランドとして、漂流ごみや省エネなどの課題に取り組んでおり、島の子供たちもさまざまな体験を通して島づくりに携わっているそう。その一環として、ビーチクリーンがあります。
「季節によって、ホテル前のビーチには大量のごみが漂着します。それを地元の少年野球チーム、少年サッカーチームのみなさんと片付けます。 ランチにはカレーを出して、みんなでワイワイ食べたり。地元の方がホテルに宿泊されることはないので、このような活動で接点が持てるのはありがたいですね。職業体験も受け入れているので、高校生と触れあうのも貴重な機会として捉えています。将来的にはこのホテルで働くスタッフが出てきたらうれしいですね」
ホテル目の前の天然ビーチ
日常から解放されて、身体も心もリフレッシュ
また後藤さんは、オフシーズンは、「スタッフがやりたいことをやる」時期にしているそう。夏が終わって、落ち着き始めた11月中旬くらいからスタッフの夢を積極的に叶える取り組みを行なっています。取材時にポスターが掲げられていた「島のスパイスカフェ」もそのひとつ。20代の女性スタッフから上がってきた企画で、宮古島のオリジナルスパイスを使った美味しそうなドリンクが提供されていました。
自家製チャイベースを使ったチャイラテ
「単にラウンジとしてご利用いただくよりも付加価値が生まれますし、スタッフの士気も上がりますし、結果サービスの向上にもつながって、といいことづくめです。秋冬にいらした方は、この時期だけの特別な企画に出会えるかもしれません」
最後に、ホテルの隅々までを案内してくれた稲里さんに、オフシーズンならではの魅力を改めて聞いてみました。
「秋冬にご宿泊されるお客さまには、自然との共存というコンセプトをじっくり体感していただきたいです。優しい光、やわらかな風に包まれて、五感を研ぎ澄まして、一瞬一瞬の時の流れに身をまかせること。旅行中は予定を詰め込みすぎず、アクティブに動きすぎず、ホテルライフを味わってもらえたらと思っています。パソコンも持って来ずに、スマホの電源も切ってデジタルデトックス---そんな時間こそがきっと活力になるはずなので」
Photo by Nacasa & Partners
宮古島では、時間の流れがいつもの2倍くらいゆったり流れている気がすると言われていた稲里さん。
リスケープという名称は、日常から離れて心身を解放させるリトリートと、エスケープを組み合わせた造語。
その名の通り、とびきりの非日常がここにあります。
南国ムードあふれるヴィラのエントランス