マンションで台風に備える7つのチェックポイント


Yuu(尾間紫)
一級建築士、 インテリアコーディネーターとして数多くの現場経験や相談実績をもち、住宅リフォームコンサルタントとして快適な住まいづくりのノウハウを発信している。
ベランダの物を家の中に入れる
植木鉢、プランター、物干し用具、サンダルなども飛ばされることがあり危険です。家の中に片付けておきましょう。
マンションの台風対策で必ずやっておきたいのが、ベランダの片付けです。
風で物が飛び始めるのは、風速20メートル程度から。近年、台風は大型化傾向にあり、最大瞬間風速が50メートルを超えることもあります。
植木鉢やプランター、物干し、ハンガー、サンダルなどを出しっぱなしにしておくと、強風で飛ばされ、凶器になってしまうことも。窓ガラスにぶつかれば、割れてしまうこともあります。
実際に、強風で植木鉢が飛ばされて窓にぶつかり、ガラスが割れて室内に破片が散乱してしまったケースもあります。
重い物でも、強風時には飛んだり動いたりすることがあります。ベランダに置いてある物は、室内に片付けておきましょう。
排水口とベランダの掃除をしておく
ベランダの排水口はていねいに掃除を。流れが悪いと雨漏りの原因になることがあります(撮影:一級建築士事務所Office Yuu)
台風前には、排水口に詰まりがないかを確認し、ベランダ全体をていねいに掃除しておきましょう。排水の流れが悪くなると、下階への雨漏りの原因になることがあります。
台風で大雨が降ると、一度に大量の水が流れ込みます。ベランダは、排気ガスなどによる油分を含んだ空気中の汚れや、飛んできた砂や泥、髪の毛、洗濯物の綿ボコリなどで意外と汚れています。
これらが雨水で流され排水口で絡まりあうと流れが悪くなり、ベランダに雨水がたまって下階へ流れ込んでしまうことも。
実際に、大雨の台風時に、掃除をしていなかったベランダの汚れや小さなゴミが排水口をふさぎ、下階のリビングに雨漏りをしてしまったケースもあります。
台風前には、ていねいにベランダの掃除をして、雨水がスムーズに排水できるようにしておきましょう。
網戸のガタツキや「外れ止め」を確認する
網戸の「外れ止め」はメーカーや窓の種類によって異なります。ステッカーが無い場合もありますので、取扱説明書やメーカーの商品サイトで確認を(撮影:一級建築士事務所Office Yuu)
台風時には、網戸はしっかりと固定をするか、もしくは外して家の中に入れておくと安心です。
網戸は意外と強風に弱いもの。強い風が吹きつけると、ガタついたり、動いたり、破損したり、時には外れて飛んでしまうこともあります。
特にマンションの高層階では風がかなり強くなることがあるので、窓の外に網戸が取り付けられている場合は、忘れずに対策をしておきましょう。
まずは、しっかり取り付けられているか点検を。網戸にガタツキがあると強風で外れやすくなります。ガタツキの原因は、戸車のゆるみ、レールに詰まったゴミ、網戸本体の歪みなどです。
戸車のゆるみは、ドライバーで調整ネジを回して調整ができます。レールはていねいに掃除を。網戸本体に歪みがある場合は、調整が難しいので専門の業者に依頼をすることをおすすめします。
その際には、「外れ止め」の確認も忘れずに。「外れ止め」とは網戸の脱落を防ぐための部品です。一般的なスライド網戸には「外れ止め」がついていますので、正しくセットをしておきましょう。
大型台風の接近が予想される場合は、網戸を養生テープなどで固定する方法もあります。ただし網戸に関する作業をする際には、落下などの危険がないよう細心の注意を払いましょう。
窓レールの掃除をして雑巾・タオルを準備する
引き違い窓に大雨が長時間吹き付けると雨水が侵入することも。雑巾やタオルなどを準備しておきましょう。
台風時には、窓のスキマから雨水が入り込んでくることがありますので、雑巾やタオルを多めに準備しておくと安心です。
特に引き違い窓に大雨が長時間吹き付けると、下のレールから雨水が染み出てくることがあります。これは普段は自然に排出されている雨水が、大量に吹き付けられたことでオーバーフローを起こしている状態。窓の構造によって起きる現象です。
また、正面から強い雨が吹き付けたり、強風で雨水が巻き上げられたりすると、上のレールからも水が垂れてくることがあります。
雨や風が弱まれば自然におさまりますので、レールに雑巾やタオルなどを当てておきましょう。またレールに汚れが溜まっていると起きやすくなりますので、ていねいに掃除をしておきましょう。
強風時はエアコンの室外機に注意を
強風時にはエアコンの室外機に注意を。動いてしまった場合は自分では触らずに専門の業者に依頼をしましょう(撮影:一級建築士事務所Office Yuu)
台風時、特に強風の際には、エアコンの室外機に注意をしましょう。
室外機に強い風が当たると、ファンやモーターに負荷が掛かったり、室外機本体が動いたりすることで、故障してしまうことがあります。令和元年には雨や風が非常に強い大型台風が日本列島を相次いで襲い、その際にはエアコンの故障事例が多数報告され、話題になりました。
最近の機種は強風にも耐えられる設計になっていることが多いのですが、猛烈な強風や固定がゆるいと壊れることも。特に10年ほど前の古い機種はスイッチを入れたままにしておくと過剰な負荷がかかって故障しやすいので注意が必要です。
心配な場合は、強風のピーク時だけでもエアコンの使用を控えると安心です。ただし、台風シーズンは夏の暑い時期が多いので、エアコンを控えるなら扇風機や保冷剤などで熱中症対策も忘れずに。
マンションの高層階や風が強い地域は、室外機が動かないようしっかりと固定しておきましょう。令和元年の台風以降、全戸で室外機の固定を見直したマンションもあります。
強風で室外機が移動したり転倒したりした場合は、触れると危険です。自分では動かさず、必ず専門の業者に依頼をしましょう。
また、台風時には換気用の吸気口から雨水が入り込むことがあります。そんな時は、一時的に閉じて換気システムをオフにするとおさまります。ただし、給気口と換気システムは室内の空気を清浄に保つために欠かせないもの。台風のピークが過ぎたら、忘れずに給気口を開け、換気システムのスイッチを入れましょう。
カーテンを閉めて窓から離れる

マンションの窓は耐風圧性能に優れています。カーテンやブランドをしっかり閉めておきましょう。
台風時に気になるのが窓の破損ですが、マンションの窓は強風に耐えられるように設計されていますので、風圧で壊れるケースはあまりありません。
マンションの窓は耐風圧性能に優れ、その基準は法律によって定められています。4階ほどの高さで風速57メートルに耐えられる性能を持ち、上層階ほど高い性能を持っています。使われているガラスも強度が高く、飛来物に対する耐性も高くなっています。
より安全性を高めたい場合は、飛散防止フィルムを貼る方法もあります。その際には、熱割れ(※)のリスクが高まる可能性があるので注意を。施工の際には管理組合に事前に確認をし、専門の業者に依頼をしましょう。
また、窓ガラスに養生テープを貼る方法は、窓の強度を上げるものではなく、割れた直後のガラスの飛散を軽減する程度と考えておきましょう。
台風時には、カーテンやブラインドをしっかりと閉めて、窓ガラスから離れた場所にいるようにしましょう。
(※熱割れとは、太陽光などの部分的な温度差でガラスが膨張し割れる現象のこと)
停電と断水に備える

ライフラインが一時的に途絶えた時の準備や、非常用持ち出し袋の点検をしておきましょう。
台風時には、停電や断水などが発生することがあります。ライフラインが一時的に途絶えた時のために、飲料水や食品、充電器、電池、懐中電灯など、「非常用持ち出し袋」や「備蓄品」の確認をしておきましょう。
非常用持ち出し袋とは、災害時に緊急避難が必要になった時に持ち出す最低限の水や食料、医薬品、懐中電灯、電池、衛生用品、当座の現金など。
備蓄品とは、ライフラインが一時的に途絶えた時に必要な、3日~7日分程度の水や食料、コンロ、ランタン、電池、バッテリー、医薬品、衛生用品、簡易トイレなどの最低限の日用品です。
台風情報を知るためにも、電池やバッテリーは多めに準備しておきたいもの。古い電池は液漏れしていることもあるので、改めて確認しておきましょう。
<まとめ>
※コラムの内容や掲載商品は執筆時(2025年6月時点)の情報であり、予告なく変更される場合がございます。最新情報をご確認下さい。