秋の夜長を上質な大人時間に 手軽に楽しむ間接照明と部分照明のアイデア

小さな灯りの工夫で、秋の夜長を上質な大人時間に変えてみませんか。ソファまわりにやわらかな陰影を添えたり、植物を照らしてドラマチックな演出をしたり。リゾートホテルのような心地よさを、コンセントひとつで手軽に叶える、そんな間接照明や部分照明のアイデアをご紹介します。

Yuu(尾間紫)
一級建築士、 インテリアコーディネーターとして数多くの現場経験や相談実績をもち、住宅リフォームコンサルタントとして快適な住まいづくりのノウハウを発信している。
静かな光だまりでつくる夜のくつろぎ時間 ランプでつくる癒しのリビング

リビングの照明を少し落とし、テーブルランプやフロアランプで部分照明を取り入れると、安らぎを感じる癒しの空間へと変わります。
日本の住宅では、天井に取り付けられた大きなシーリングライトが主流です。これは部屋全体を明るく照らすには効果的ですが、均一に明るい空間は視界に入る情報が多くなり、緊張を感じやすくなることも。空間の印象も、どこか平坦になりがちです。
暗がりの中にぽっと浮かぶ小さな「光だまり」は、視界の情報量をほどよく抑え、心をほっとさせてくれます。焚火の明かりや、ホテルの客室に設けられた部分照明など、光と影のほどよいバランスに包まれると、心がゆっくりと落ち着いていく、そう感じる人も多いことでしょう。
静かな光だまりは、安らぎやリラックス効果をもたらします。リビングにお気に入りのテーブルランプやフロアランプをひとつ加えれば、秋の夜長がより心地よく、穏やかな時間へと変わります。

美しいミニマムデザインのフロアランプ。調光ができ、上方向への点灯も可能。上+下、下、上だけなどさまざまな光のデザインが楽しめます(グローLEDフロアランプ/アートワークスタジオ)
観葉植物や絵画にスポットを 光の演出でアートを楽しむ

小さな床置きのLED照明で観葉植物をライトアップ。スマホアプリで点灯、消灯、光の明るさを変えることができます。左:照射イメージ、右:照明器具拡大(フロアスタンド LINK STYLE LED/パナソニック)
空間にスポット照明をプラスすれば、自宅にいながらアートを楽しめる贅沢な空間が生まれます。
たとえば、床置きの小さなLED照明で観葉植物を照らすと、葉の陰影がくっきりと際立ち、壁や天井に浮かび上がる影はまるでアート作品のよう。このように影を映し出す照明手法は「シャドウライティング」と呼ばれ、空間に深みやドラマチックな表情を生みだします。
また、お気に入りの絵画やオブジェを「ライトアップ」すれば、自分だけの特別なギャラリーに。ダクトレールにスポット照明をプラスして、照明の向きを自在に調整できるようにするのもいいでしょう。
スイッチひとつで、その日の気分に合わせて空間を彩ることができるのも、スポット照明の魅力のひとつ。こんな素敵な空間で食事やお酒を楽しめたら、夜になるのが楽しみになりそうです。

スリム&コンパクトなスポット照明なら、空間にすんなり馴染みます。配線ダクト取付型 スポットライト LEDフラットランプ。光を当てたい方向に角度が変えられます(XSZP3567L CB1、LGK9100B /パナソニック)
ソファまわりを美しく引き立てる灯り 高級リゾートのような非日常感を

壁面を明るくしたり、床面を明るくしたり。ソファの下などに設置すると手軽に間接照明が楽しめます。上:照射イメージ、下:照明器具拡大HomeArchi ホリゾンタルライト スタンドタイプ(SF062WK/パナソニック)
ソファやテレビ、ベッドまわりに「間接照明」を加えれば、高級リゾートのような非日常感を手軽に演出できます。
間接照明とは、光源を直接見せず、壁や天井、床などに光を反射させて空間を照らす手法のこと。やわらかく広がる光は、まぶしさを抑えつつ、空間に陰影と奥行きをもたらし、高級ホテルのような上質な安らぎ感を生み出します。
たとえば、ソファや家具の背面、ベッドのヘッドボード裏などに小さな照明を仕込めば、壁に沿って広がる光の中にシルエットが浮かび上がり、ロマンチックな雰囲気に。
テレビまわりにも、照明を少しプラスして。映画館のように部屋を真っ暗にすると、かえって目が疲れてしまいます。部屋の灯りを少し落とし、小さな照明でほんのり明るさを足せば、目に優しくムードも満点。秋の夜長に、懐かしい映画を見てのんびり過ごすのもいいですね。
最近では手軽に使えるテープライトもありますが、DIYで取り付ける場合は安全性を十分に確認しましょう。電気工事が必要な場合は、有資格者が工事を行う必要があります。


間接照明「まくちゃん」シリーズのスタンド。コンセントから繋いでテレビの後ろに置くだけ。上:照射イメージ、下:照明器具拡大(DST-38692Y/DAIKO)
会話が弾む足元のやわらかな光 リビングを大人のリラックス空間に

思わず触れたくなるような、なめらかなデザイン。ガラスはマウスブローで制作。点灯するとグレーは夜霧の中で、ホワイトは朝霧の中で光を灯したようにほのかに光ります。奈良に拠点をおく照明ブランド(FOG/NEW LIGHT POTTERY)
夕食後のひととき、リビングの照明を少し落とし、フロアランプで足元をほんのり照らせば、大人のためのリラックス空間へと変わります。
全体を明るく照らす光から、低い位置の光に切り替えることで、自然と目線が下がり、ゆったりとした気持ちに。顔を直接照らさないので緊張が和らぎ、リラックスして会話を楽しめるようになります。
さらに床を照らすことで、空間の重心が下がり、より落ち着いた雰囲気に。夫婦でワインを楽しんだり、気のおけない友人たちと語り合ったり。足元のあたたかな光に包まれ、ゆったりと穏やかなひとときになることでしょう。

ころんとしたフォルムがレトロでありながら、モダンを感じさせるタイムレスなデザイン。シェードは可動式なので手元を照らしたり、床を照らしたり、さまざまなシーンで活躍します(VL38 フロア/ルイスポールセン)
読書の秋に目に優しい光を 心を整えるベッドサイド照明
天然木とファブリック、自然素材の組み合わせが優しくあたたかな雰囲気。光源が見えにくいよう、上部もセードで覆われています。充電式のポータブルLED照明なので持ち運び自由(アルベロLEDテーブルランプ/アートワークスタジオ)
秋の夜長は読書を楽しむのにぴったりの季節。ベッドで本を読むなら、目に優しい照明を取り入れてみましょう。
ベッドサイドでは、光源が直接目に入りにくいデザインを選ぶのがポイントです。眠る前に強い光が目に入ると、睡眠の質を下げる原因に。シェードには布や和紙など柔らかい素材感のあるものを選ぶと、優しく落ち着いた空間づくりができます。
秋の夜は少しスマホから離れて、ゆったりと読書を楽しんでみてはいかがでしょう。静かな時間が、心を整える穏やかな習慣になってくれるかもしれません。
ベースとなる陶器の部分は信楽焼き、赤味を帯びたシェードはオリジナルのファブリックの播州織り。柔らかい光が広がります(Tod/NEW LIGHT POTTERY)
小さな照明の工夫で、暮らしの心地よさは大きく変わります。照明は、空間の印象だけでなく、心の豊かさや時間の過ごし方にも影響を与える大切なエレメント。上手に取り入れて、深まる秋の夜を心ゆくまでお楽しみください。
※コラムの内容や掲載商品は執筆時(2025年7月)の情報であり、予告なく変更される場合がございます。最新情報をご確認下さい。