街とのつながりを伝えるフランス料理とおもてなし。野村不動産グループの料理人 vol.1「Bistro NOHGA 海老原シェフ」
野村不動産グループで働くシェフの方々に、料理の道を志したきっかけから現在までのストーリーをうかがい、読者におすすめの一品レシピをご紹介いただく新しい連載がスタートします。vol.1の今回は、「NOHGA HOTEL UENO TOKYO」の直営レストラン「Bistro NOHGA」の料理長を務める、海老原威郎さんにお話をお聞きしました。
地域とのつながりを深く持ちながら、その街ならではの体験を提供することをコンセプトに掲げるNOHGA HOTEL。江戸時代から続く「ものづくり」の伝統が根付く台東区に位置するBistro NOHGAでは、個性豊かな近隣の店舗の食材を取り入れながら、旬の食材の魅力を活かしたコンテンポラリー料理でゲストの方々をもてなしています。海老原シェフに、フランス料理との出会いからBistro NOHGAの立ち上げ、料理長の視点から感じるNOHGA HOTELの魅力についてうかがいました。
海老原 威郎
千葉県出身。高校卒業後、知人の紹介で企業内のレストランに就職。系列のフレンチレストランに移動。その後、シェ松尾、竹芝インターコンチネンタルホテル、白金台OZAWAを経て渡仏。ジュラ地方2つ星店で勤務。帰国後、都内レストラン、ビストロ、ブライダルハウス、ホテルレストランで料理長を経験。NOHGA HOTEL上野の開業準備室を経て、同ホテルの料理長に就任。2026年4月より、同社が運営するレストラン3店舗の統括料理長に就任。
すべてが新鮮だったフランス料理との出会い
高校生の頃、個人経営の小さな喫茶店でのアルバイトをきっかけに、料理の世界に興味を持つようになったという海老原さん。高校卒業後、知人の紹介で都内の店舗に就職し、さっそく料理の道へ。一般の方も利用できる企業内のレストランにて、3年ほどの経験を積んだそうです。
「サラダにスープ、主菜といった簡単な洋食を提供するお店でした。とはいえ、なにもわからない状態でこの世界に飛び込んだので、はじめたての頃は毎日がいっぱいいっぱいで、何もかもが刺激的でしたね。まずはできることをこなしながら、先輩に言われた以上の仕事ができるように、なんとか日々を凌いでいました」
その後、当時の料理長からの勧めを受け、次のステップに進むために別のレストランへ転職。そこで現在の専門である、フランス料理と出会います。その時に感じた驚きを、海老原さんが振り返ります。
「それはもう、衝撃的でしたね。見るもの、食べるもののすべてがおもしろかったし、美味しかった。口にしたことのない料理に、見たことのない調理工程、そのどれもが新鮮で。その時の経験はいまの僕の基礎になっていると思います。
フランス料理では、レシピに書かれた通りの分量や工程でつくるのではなく、食材や環境、さらにはゲストの様子に合わせることで、料理そのものを変えていきます。ゲストに満足してもらうことはもちろん、自分自身でも満足できる料理を目指していくことがフランス料理の基礎であり、醍醐味なんじゃないかなと思います」

28歳で単身フランスへ。2つ星レストランでの学び
フランス料理との出会い以来、本場で働くことへの憧れの気持ちを募らせていた海老原さんは、28歳で渡仏を決意。フランス・ジュラ地方に位置するミシュラン2つ星のレストランにて、1年間の経験を積みます。世界中のシェフが集う職場で、慣れないフランス語を使った仕事に四苦八苦しながらも、徐々に周囲と打ち解けていきました。そのきっかけとなったのは、意外にも“サッカー”だったそうです。
「フランスのレストランはサッカーチームを持っていることが多くて、僕が働いていたお店でも、休憩時間になるとみんなでサッカーをしていたんです。『日本人、行くぞ』と連れて行かれるんですが(笑)、もともと運動は得意な方だったので、ストレス発散も兼ねてプレイしているうちにコミュニケーションが取れるようになり、周りのシェフとも仲良くなっていきました」
その後、着実に仕事を覚えていったという海老原さん。本場のフレンチならではの違いとして、どのようなことを感じたのでしょうか?
「やっぱり、日本人とは違うセンスを感じましたね。たとえば、いまではあたりまえになっていますが、お魚にフルーツを合わせる料理など、当時はそんな考え方があるんだなと、感心してしまいました。
また、すべての食材が日本とは違うので、そこに慣れるのにも時間がかかりました。同じ野菜でも、繊細で柔らかい日本のものに比べると、フランスの野菜は固かったり、味が濃かったり。チーズなどの乳製品や、ワイン、お魚もしかりです。日本ではうなぎの蒲焼きを皮ごと食べますが、フランスでは皮が硬くて食べられないため、剥いてから調理をします。なので、すべての料理の下処理が変わってくるんです」
1年間ほどの研修を経て日本に帰国した海老原さんは、数軒の店舗で料理長を経験。その後、銀座のホテルのレストランで働いていた際に、開業準備を進めていたBistro NOHGAの料理長の仕事をオファーされることに。「開業前から関われることはなかなかない経験なので、とても楽しみにしていました」と海老原さんは当時を振り返ります。
料理の腕が買われたのはもちろんですが、オファーの大きな理由となったのは、料理人としての海老原さんのおもてなしの姿勢でした。
「僕にオファーをしてくれたのが、当時働いていたレストランによく食事に来られていた方だったんです。実は以前、提供した魚料理の下処理が甘く、残っていた小骨がその方の喉に刺さってしまったことがあったんですが、帰り際にお詫びし、さらにメールでも謝罪のご連絡をした上で、またお越しいただいた時に、おもてなしをさせていただきました。そういった積み重ねがあったからこそ、現在も親しくさせていただけているのかなと感じています」
「ものづくり」の街とのつながりを感じられるフランス料理

NOHGA HOTELでは、地域との深いつながりを感じさせるホテルであることをコンセプトに掲げています。NOHGA HOTEL UENO TOKYOが位置する台東区は、浅草をはじめ、江戸時代から続く伝統が根付く街であり、なかでも皮革製品をはじめとする「ものづくり」の街としても知られています。「この仕事に関わるようになる以前は、あまり上野には来たことがなかったんですが、昔から続いている老舗のお店や、興味深い食材がたくさんあることを知りました。NOHGA HOTELの特長は、そういった近隣のお店とのつながりを深めながら、ホテルのサービスやプロダクトに落とし込んでいるところにあり、それは渋谷や表参道などにはない魅力につながっていると思います」と語る海老原さん。レストランのオープンに向けてメニュー開発を進める中では、実際に近隣のお店に足を運びながら、店主や生産者の方々のお話を聞き、料理に落とし込む方法を模索していったそうです。
現在Bistro NOHGAでは、お米や味噌、醤油、出汁に使用している鰹節や昆布、さらにコーヒーやお茶といった素材を、近隣の店舗から仕入れています。これらを使用した料理の提供はもちろん、仕入れ先の近隣店舗を「ネイバーズ」としてゲストにご紹介している点も、Bistro NOHGAの大きな特徴です。日本全国、さらには世界中から食材を取り寄せることができるこの時代において、歩いて行くことができる距離のお店から食材を調達することは、料理を通じてこの街で暮らす方々の魅力を伝えることにつながります。
「Bistro NOHGAで使用しているお米は、50種類以上の品種を取り扱う、お米への深い愛を持つ店主から仕入れたものです。お味噌に関しても、酵母を生かすために樽のなかで熟成させているお店のものを使用していて、スーパーで売られているパッケージ入りのものとは、まったく違う味わいが感じられます。それぞれのこだわりを直接聞けるのは本当におもしろいですね」
ネイバーズとの関わりを通じて生まれたメニューもあります。たとえば春のメニューのデザートとして提供しているカカオパルプのブラマンジェは、蔵前に店舗を構えるサンフランシスコ発のチョコレートブランド「ダンデライオン・チョコレート」とのコラボレーションをきっかけに生まれた一品です。
「以前、ダンデライオン・チョコレートの方々とコラボレーションさせていただく機会があり、カカオパルプのおもしろさを教えていただいたことがきっかけで使いはじめました。原産国では『カカオはフルーツだ』と言われているようで、ヨーグルトのような風味のある、液体状のカカオパルプを固めてブラマンジェにしています」
納得のいく料理とおもてなしで、台東区を盛り上げていきたい
「たとえば、デザートにミントの葉っぱが乗せられていることがよくありますが、ただ見た目をよくするためだけに使うことは、本来のフランス料理ではないと僕は思うんです。ハーブの一種であるミントには、それに合わせた使い方があります。口の中を軽くするフレーバーとして使うのであれば、刻んだり、抽出して液体にしたものを入れたり。それぞれの食材が持つ本来の魅力を、十分に活かすことができる料理をしていきたいと思っています」

海老原さんが愛用する、福井県の高村刃物製作所の包丁
先に触れたように、フランス料理の醍醐味は、食材はもちろん、ゲストの様子に合わせて、料理そのものを変えていくところにあります。季節に合わせた旬の食材を使うことはもちろんですが、毎日訪れるゲストの方々に合わせた料理を提供するためには、ホールで接客を務めるスタッフとの連携が欠かせません。利き手によって盛り付けの角度を変えるなど、自然なコミュニケーションを通してゲストが求めるサービスをキッチンに提案するホールスタッフの存在は、Bistro NOHGAが提供する体験の重要な側面を担っています。
「火の入れ方や油の量など、ゲストの希望に合わせて料理を変えていくことは、フレンチレストランとしてはあたりまえのことです。プロのサービスマンであるホールのスタッフと連携しながら、それ以上のサービスを提供することで、一歩先のおもてなしができるレストランにしていきたいと思っています」
現在Bistro NOHGAは連日賑わいを見せており、海外のお客様も数多く訪れています。「『アメイジング!』と言って帰られる外国のゲストの方もいらっしゃって、そういう時はもう、本当に嬉しいですね」と表情を緩める海老原さん。この仕事のやりがいについてたずねると、「第一に、ゲストの方々の満足。そしてチームメンバーが楽しく働ける環境をつくることですね」と語ります。最後に、今後の展望についてもお話いただきました。
「料理人としては、10年先でも見劣りがしない料理をつくっていきたいと思いますし、ここの料理をきっかけに、台東区がもっと盛り上がるきっかけをつくっていきたいですね。あとは、日々頑張って働いてくれているスタッフみんなの未来をつくるために、ゆくゆくは野村不動産直営のレストランの2号店をつくることを目指していきたいと思っています」
海老原シェフの一品「キューバサンド」

・ハム
・チーズ
・オリーブ油
・バター(無塩、有塩はお好みで)
・ディジョンマスタード
・粒マスタード
・はちみつ

バゲットの上にバットを乗せ、鍋の蓋など重さのあるものでプレスします。焼いている間はしっかりと押さえましょう。
5. ある程度両面を焼いたらバターを入れ、さらに焼いていきます。

6. しっかり焼き色がついたら、お好みのサイズにカットしてできあがり。
おいしくつくるコツ
・バゲットはパン屋さんで売られているしっかりしたものよりも、スーパーで売られているやわらかいものを使うこと。その方が油を吸収しやすく、プレスした時にかたちが整えやすいです。
・焼いている間、パンはしっかりプレスすること。火が均一に通り、カリッとした食感に仕上がります。
・パンが油を吸ってしまうので、オリーブオイルとバターはたっぷりと使います。
※分量・焼き時間・火加減は目安です。ご家庭の調理器具やコンロの仕様にあわせて調整してください。
※オリーブオイルやバターを多めに使用するレシピです。やけどや油はねに十分ご注意ください。
※はちみつを使用しています。1歳未満のお子さまには与えないでください。
※食品アレルギーをお持ちの方は、材料を事前にご確認のうえ、必要に応じて代替食材をご使用ください。
